Emdogain(エムドゲイン)とは?歯周組織を再生する代表的材料を解説
— Regeneration / 歯周再生

Emdogain(エムドゲイン)
とは?歯周組織を再生する
代表的材料を解説。

— Published 2026.06.19
湯口晃弘

— この記事の監修者

湯口 晃弘(ゆぐち あきひろ)/ 医療法人令徳会 理事長・ユアーズデンタルクリニック院長

日本歯周病学会認定医、EAO(European Association for Osseointegration)認定医、5-D Japan ペリオインプラントコース インストラクター。2026年5月、米国歯周病学会の公式誌 Clinical Advances in Periodontics に筆頭著者として症例報告を発表(DOI: 10.1002/cap.70076)。

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歯周組織再生療法で世界的に広く使われている「Emdogain(エムドゲイン)」── 30年以上の臨床実績を持ち、歯周病で失われた組織を再生させる代表的な治療材料です。
本記事では、Emdogainの仕組み、適応となる症例、安全性、治療の流れを、知識ゼロの方にもわかるように解説します。
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湯口院長による動画解説(約8分):「歯肉移植で歯周ポケット?根面被覆のウソ・ホント」── 湯口院長による解説動画。歯周組織再生療法で広く使われるエナメルマトリックスデリバティブ(Emdogain)を含む、歯肉移植と歯周治療の関係を論文ベースで解説しています。
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Emdogainとは — 名前の由来と歴史

Emdogain(エムドゲイン)は、スウェーデンのStraumann(ストローマン)社が開発した、歯周組織再生療法用の医療材料です。

正式名称は「エナメルマトリックスデリバティブ」(Enamel Matrix Derivative、略してEMD)。日本語では「エナメル基質誘導体」と呼ばれます。

名前の意味

  • 「エナメル」=歯の表面にある最も硬い組織(エナメル質)のこと
  • 「マトリックス」=歯ができる時に組織を形作る土台のこと
  • 「デリバティブ」=由来物・派生物

つまり、「歯ができる時に組織を作る土台となるタンパク質を、薬剤として応用したもの」がEmdogainです。

歴史

1996年に欧州で医療材料として承認され、世界中で歯周組織再生療法に使用されてきました。30年近い臨床実績と、数千本の論文で効果と安全性が確認されている、確立された治療材料です。

なぜ歯周組織が再生するのか — 仕組み

Emdogainの最大の特徴は、「歯が生まれてくる時の現象を、再現する」ことです。

歯ができる時に起こっていること

人の歯は、母親のお腹の中で胎児の時から少しずつ作られます。歯ができる過程で、「エナメル基質タンパク質」と呼ばれるタンパク質が、歯の周りの組織(セメント質・歯根膜・歯槽骨)を順序立てて形成する役割を果たします。

たとえ話:歯ができる時のエナメル基質タンパク質は、「建築現場の設計図」のようなもの。土台(骨)、柱(歯根膜)、外壁(セメント質)が、適切な順序で組み立てられるよう指示を出しています。

Emdogainは、子豚の歯から抽出・精製した、このエナメル基質タンパク質を主成分とする医療材料です。歯周組織再生療法の際に歯根面に塗ることで、生まれた時と同じプロセスを再現し、失われた歯周組織の再生を促します。

再生される3つの組織

Emdogainによって再生される歯周組織は、以下の3つです。

  • セメント質(歯根の表面を覆う薄い組織)── 歯根膜を歯にしっかり結びつける役割
  • 歯根膜(しこんまく)── 歯を骨に支える、繊維の束。クッションのような役割もあり、噛む力を分散
  • 歯槽骨(しそうこつ)── 歯を支える顎の骨

この3つが揃って、初めて歯が「正しく支えられた状態」になります。Emdogainは、この3つを統合的に再生する稀有な材料です。

適応となる症例 — 効果が出やすい歯周病

Emdogainは万能ではなく、効果が出やすい症例条件があります。

最も効果が出やすい:垂直性骨欠損・特に3壁性骨欠損

歯周病で骨が「縦に深く溶けている」パターン(垂直性骨欠損)で、欠損の周りに骨の壁が3面残っている「3壁性骨欠損」が、Emdogainの最良の適応です。

これは、Emdogainが「再生のための足場」を必要とするため。3壁性骨欠損は、その足場(骨の壁)が3面残っているため、再生プロセスが安定して進みます。

比較的効果が出やすい:2壁性・狭く深い1壁性骨欠損

骨の壁が2面・1面と少なくなるほど効果は限定されますが、欠損が狭く深い場合は適応となります。骨補填材との併用で効果を高めることが多いです。

効果が出にくい:水平性骨欠損

骨が水平にすり減るように溶けているパターンでは、Emdogainの効果は限定的です。再生のための足場が形成しにくいため、別の治療法(歯周外科のみ・抜歯など)を検討します。

POINT: 「歯周病だからEmdogain」ではなく、「骨欠損の形態に応じてEmdogainの適応を判断する」が正しい順序です。CT検査による精密診断が不可欠です。

安全性と副作用について

Emdogainは1996年の欧州承認以来、世界中で使用されており、重大な副作用の報告はほぼありません

30年
世界での
使用実績
数千本
効果と安全性を
検証した論文数
1996
欧州での
医療材料承認年

ご注意いただきたいケース

以下に該当する方は、事前にカウンセリングでお伝えください。

  • 豚肉アレルギーをお持ちの方 ── Emdogainは子豚の歯から抽出した成分を含むため、ごく稀に過敏反応の可能性
  • 妊娠中・授乳中の方 ── 安全性のデータが限定的なため、治療時期の検討が必要
  • 免疫抑制剤の服用中の方 ── 治癒過程に影響する可能性

当院ではすべての患者さんに、Emdogainの作用機序・期待される効果・想定されるリスクをご説明した上で、同意のもとに治療を行います。

— Consultation

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札幌・大通駅直結のユアーズデンタルクリニックで、湯口院長によるご相談を承っています。CT検査で、Emdogainの適応をご診断します。

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治療の流れと費用感

Emdogainを用いた歯周組織再生療法は、以下の流れで進みます。

STEP 1:初診カウンセリング・精密検査

CT撮影、口腔内検査、レントゲン撮影。骨欠損の形態評価とEmdogainの適応判断を行います。

STEP 2:歯周基本治療

再生療法の前提として、歯石除去・歯肉縁下のクリーニングを行い、歯周組織の炎症を可能な限り改善します。Emdogainの効果を最大化するための準備段階です。

STEP 3:再生療法(手術・約1〜2時間)

局所麻酔下で、歯肉を最小限切開(症例によりM-MIST法)。歯根面の感染肉芽組織を除去し、清掃した歯根面にEmdogainを塗布。症例によっては骨補填材も併用します。精密に縫合します。

STEP 4:経過観察

術後1週・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月で経過を確認。骨再生の評価は術後12ヶ月時点で行います。

費用について

Emdogainを用いた歯周組織再生療法は、自由診療となります。費用は症例の複雑さ・部位数により異なりますので、カウンセリングでご説明します。

他の再生材料との比較

歯周組織再生療法には、Emdogain以外にも複数の材料があります。当院では、症例に応じて使い分けます。

Emdogain(エナメル基質タンパク質)

  • 30年以上の世界実績
  • セメント質・歯根膜・歯槽骨の3つを統合的に再生
  • 幅広い症例に適応

骨補填材

  • 骨を物理的に補う材料(人工骨・自家骨)
  • Emdogainと併用することで、より大きな骨再生が期待できる

GTR法(遮断膜による組織誘導)

  • 1980年代から使われている古典的かつ確立された再生療法
  • 骨欠損の形態によっては現在も有効な選択肢

これら複数の材料を、症例の骨欠損形態・歯周組織の状態・期待される結果に応じて組み合わせるのが、現代の歯周組織再生療法の進め方です。

よくあるご質問

Emdogain(エムドゲイン)とは何ですか?
Emdogainは、歯の発生時に重要な役割を果たす「エナメル基質タンパク質」を主成分とする、歯周組織再生療法用の医療材料です。歯根面に塗布することで、セメント質・歯根膜・歯槽骨を再生する治療法に使われます。1996年に欧州で承認され、世界中で30年近い使用実績がある、安全性の確立された材料です。
Emdogainの安全性は?副作用はありますか?
Emdogainは、子豚の歯から抽出されたエナメル基質タンパク質を精製したもので、世界中で30年以上の使用実績があります。重大な副作用の報告はほぼなく、安全性の確立された材料です。豚肉アレルギーがご心配な方や、妊娠中・授乳中の方、免疫抑制剤を服用されている方は、事前にカウンセリングでお伝えください。
Emdogainを使う治療は札幌で受けられますか?
はい、ユアーズデンタルクリニック(札幌・大通駅直結)でEmdogainを用いた歯周組織再生療法を提供しています。湯口院長は『日本歯科評論』2021年8月号で「M-MIST法による歯周組織再生療法」を執筆しており、Emdogainを含む再生療法の臨床経験を持ちます。
Emdogainで「絶対」骨は再生しますか?
残念ながら「絶対」ではありません。骨欠損の形態(垂直性か水平性か、壁の数)、歯周組織の状態、患者さんの全身状態、術後のメインテナンスなどにより、結果は異なります。最良の適応である3壁性骨欠損では高い再生率が期待できますが、すべての症例で同じ結果が出るわけではないことをご了承ください。
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