Emdogain(エムドゲイン)
とは?歯周組織を再生する
代表的材料を解説。

— この記事の監修者
湯口 晃弘(ゆぐち あきひろ)/ 医療法人令徳会 理事長・ユアーズデンタルクリニック院長
日本歯周病学会認定医、EAO(European Association for Osseointegration)認定医、5-D Japan ペリオインプラントコース インストラクター。2026年5月、米国歯周病学会の公式誌 Clinical Advances in Periodontics に筆頭著者として症例報告を発表(DOI: 10.1002/cap.70076)。
プロフィール詳細を読む →本記事では、Emdogainの仕組み、適応となる症例、安全性、治療の流れを、知識ゼロの方にもわかるように解説します。
Emdogainとは — 名前の由来と歴史
Emdogain(エムドゲイン)は、スウェーデンのStraumann(ストローマン)社が開発した、歯周組織再生療法用の医療材料です。
正式名称は「エナメルマトリックスデリバティブ」(Enamel Matrix Derivative、略してEMD)。日本語では「エナメル基質誘導体」と呼ばれます。
名前の意味
- 「エナメル」=歯の表面にある最も硬い組織(エナメル質)のこと
- 「マトリックス」=歯ができる時に組織を形作る土台のこと
- 「デリバティブ」=由来物・派生物
つまり、「歯ができる時に組織を作る土台となるタンパク質を、薬剤として応用したもの」がEmdogainです。
歴史
1996年に欧州で医療材料として承認され、世界中で歯周組織再生療法に使用されてきました。30年近い臨床実績と、数千本の論文で効果と安全性が確認されている、確立された治療材料です。
なぜ歯周組織が再生するのか — 仕組み
Emdogainの最大の特徴は、「歯が生まれてくる時の現象を、再現する」ことです。
歯ができる時に起こっていること
人の歯は、母親のお腹の中で胎児の時から少しずつ作られます。歯ができる過程で、「エナメル基質タンパク質」と呼ばれるタンパク質が、歯の周りの組織(セメント質・歯根膜・歯槽骨)を順序立てて形成する役割を果たします。
Emdogainは、子豚の歯から抽出・精製した、このエナメル基質タンパク質を主成分とする医療材料です。歯周組織再生療法の際に歯根面に塗ることで、生まれた時と同じプロセスを再現し、失われた歯周組織の再生を促します。
再生される3つの組織
Emdogainによって再生される歯周組織は、以下の3つです。
- セメント質(歯根の表面を覆う薄い組織)── 歯根膜を歯にしっかり結びつける役割
- 歯根膜(しこんまく)── 歯を骨に支える、繊維の束。クッションのような役割もあり、噛む力を分散
- 歯槽骨(しそうこつ)── 歯を支える顎の骨
この3つが揃って、初めて歯が「正しく支えられた状態」になります。Emdogainは、この3つを統合的に再生する稀有な材料です。
適応となる症例 — 効果が出やすい歯周病
Emdogainは万能ではなく、効果が出やすい症例条件があります。
最も効果が出やすい:垂直性骨欠損・特に3壁性骨欠損
歯周病で骨が「縦に深く溶けている」パターン(垂直性骨欠損)で、欠損の周りに骨の壁が3面残っている「3壁性骨欠損」が、Emdogainの最良の適応です。
これは、Emdogainが「再生のための足場」を必要とするため。3壁性骨欠損は、その足場(骨の壁)が3面残っているため、再生プロセスが安定して進みます。
比較的効果が出やすい:2壁性・狭く深い1壁性骨欠損
骨の壁が2面・1面と少なくなるほど効果は限定されますが、欠損が狭く深い場合は適応となります。骨補填材との併用で効果を高めることが多いです。
効果が出にくい:水平性骨欠損
骨が水平にすり減るように溶けているパターンでは、Emdogainの効果は限定的です。再生のための足場が形成しにくいため、別の治療法(歯周外科のみ・抜歯など)を検討します。
安全性と副作用について
Emdogainは1996年の欧州承認以来、世界中で使用されており、重大な副作用の報告はほぼありません。
使用実績
検証した論文数
医療材料承認年
ご注意いただきたいケース
以下に該当する方は、事前にカウンセリングでお伝えください。
- 豚肉アレルギーをお持ちの方 ── Emdogainは子豚の歯から抽出した成分を含むため、ごく稀に過敏反応の可能性
- 妊娠中・授乳中の方 ── 安全性のデータが限定的なため、治療時期の検討が必要
- 免疫抑制剤の服用中の方 ── 治癒過程に影響する可能性
当院ではすべての患者さんに、Emdogainの作用機序・期待される効果・想定されるリスクをご説明した上で、同意のもとに治療を行います。
歯を残す再生療法のご相談を
札幌・大通駅直結のユアーズデンタルクリニックで、湯口院長によるご相談を承っています。CT検査で、Emdogainの適応をご診断します。
相談する治療の流れと費用感
Emdogainを用いた歯周組織再生療法は、以下の流れで進みます。
STEP 1:初診カウンセリング・精密検査
CT撮影、口腔内検査、レントゲン撮影。骨欠損の形態評価とEmdogainの適応判断を行います。
STEP 2:歯周基本治療
再生療法の前提として、歯石除去・歯肉縁下のクリーニングを行い、歯周組織の炎症を可能な限り改善します。Emdogainの効果を最大化するための準備段階です。
STEP 3:再生療法(手術・約1〜2時間)
局所麻酔下で、歯肉を最小限切開(症例によりM-MIST法)。歯根面の感染肉芽組織を除去し、清掃した歯根面にEmdogainを塗布。症例によっては骨補填材も併用します。精密に縫合します。
STEP 4:経過観察
術後1週・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月で経過を確認。骨再生の評価は術後12ヶ月時点で行います。
費用について
Emdogainを用いた歯周組織再生療法は、自由診療となります。費用は症例の複雑さ・部位数により異なりますので、カウンセリングでご説明します。
他の再生材料との比較
歯周組織再生療法には、Emdogain以外にも複数の材料があります。当院では、症例に応じて使い分けます。
Emdogain(エナメル基質タンパク質)
- 30年以上の世界実績
- セメント質・歯根膜・歯槽骨の3つを統合的に再生
- 幅広い症例に適応
骨補填材
- 骨を物理的に補う材料(人工骨・自家骨)
- Emdogainと併用することで、より大きな骨再生が期待できる
GTR法(遮断膜による組織誘導)
- 1980年代から使われている古典的かつ確立された再生療法
- 骨欠損の形態によっては現在も有効な選択肢
これら複数の材料を、症例の骨欠損形態・歯周組織の状態・期待される結果に応じて組み合わせるのが、現代の歯周組織再生療法の進め方です。
よくあるご質問
歯を残すために、
まずは話してみませんか。
札幌・大通駅直結のユアーズデンタルクリニックで、湯口院長によるご相談を承っています。現在のお口の状態、これまでの治療歴、これからの不安、何でもお聞かせください。
