歯ぐきが下がる原因と治し方
自力で戻せる?札幌の歯周外科

— この記事の監修者
湯口 晃弘(ゆぐち あきひろ)/ 医療法人令徳会 理事長・ユアーズデンタルクリニック院長
日本歯周病学会認定医、EAO(European Association for Osseointegration)認定医、5-D Japan ペリオインプラントコース インストラクター。2026年5月、米国歯周病学会の公式誌 Clinical Advances in Periodontics に筆頭著者として症例報告を発表(DOI: 10.1002/cap.70076)。
プロフィール詳細を読む →結論からお伝えします。適応条件が揃えば、下がった歯ぐきは「根面被覆術」で戻すことが可能です。
▲ 実際の症例:下がった歯ぐきを根面被覆術で改善(治療期間・費用は症例により異なります/自由診療)
歯ぐきが下がる4つの原因
歯ぐきの後退(歯肉退縮)は、たいてい複数の原因が組み合わさって起こります。代表的な4つの原因を理解することが、治療方針を立てる出発点です。
1. 加齢による組織変化
年齢を重ねるにつれ、歯ぐきや骨を含む歯周組織は徐々に変化します。これは生理的なもので、誰にでも起こります。ただし、加齢だけで急激に歯ぐきが下がることは少なく、他の要因と組み合わさることが多いです。
2. 歯周病による炎症
慢性的な歯周病は、歯ぐきの炎症と骨吸収を引き起こし、結果として歯ぐきの後退を招きます。特に「治療後の歯周病安定期」に、骨吸収が止まったあとも歯ぐきの後退だけが進行することがあります。
3. 強すぎるブラッシング
「歯磨きを丁寧に」と思って力強くゴシゴシ磨くと、歯ぐきが物理的に傷つけられ、徐々に退縮していきます。特に、犬歯(八重歯)や小臼歯など、口角に近い部位で起こりやすいパターンです。歯ブラシの硬さ・力の入れ方・磨き方を見直す必要があります。
4. 矯正治療による歯の移動
矯正治療で歯を動かす過程で、歯が骨の薄い側に押し出されると、その部位の歯ぐきが薄くなり退縮します。矯正治療を予定している方は、事前に歯ぐきの厚みを評価し、必要であれば結合組織移植で歯ぐきを厚くしてから矯正を行うのが理想的です。
自力で戻せる?セルフケアで治る?
結論からお伝えします。一度下がった歯ぐきが、歯磨きなどのセルフケアだけで元の高さに戻ることはありません。歯ぐきの後退は、歯ぐきそのものの組織が失われた状態なので、自然回復は期待できないのが正直なところです。
ただし、悲観する必要はありません。歯科での治療(根面被覆術など)によって、下がった歯ぐきを元に近い高さまで戻せる可能性は十分にあります。市販のヒアルロン酸注入などは時間が経つと吸収されて元に戻るため、根本的な改善には、ご自身の歯ぐきを移植する方法が確実です。
セルフケアで大切なのは「これ以上下げないこと」。強すぎるブラッシングをやめ、正しい歯磨きに切り替えることが、退縮の進行を止める第一歩になります。
放置するとどうなる?
下がった歯ぐきをそのままにしておくと、次のような問題が起こりやすくなります。
- 知覚過敏:露出した歯根は刺激に弱く、冷たいものがしみやすくなります。
- 根面むし歯:歯根はエナメル質に覆われていないため、露出した部分はむし歯になりやすい部位です。高齢になるほどリスクが高まります。
- 見た目の問題:歯が長く見える、歯と歯の間に黒い隙間(ブラックトライアングル)ができるなど、審美的な悩みにつながります。
- さらなる退縮:原因を放置すると退縮が進行し、治療の難易度が上がります。早めの対応が、より確実な改善につながります。
「歯肉退縮」の分類と適応診断
歯肉退縮には、現代の標準分類である「Cairo分類(RT分類)」があります。これは2011年に Cairo らが提唱した分類で、歯間部の組織がどれだけ残っているかで予後(治療後の被覆率)が決まることを示したものです。
RT1(旧Miller Class I・II相当)
歯間乳頭と歯間部の骨が完全に温存されている状態。根面被覆術の最良の適応で、完全被覆(100%)が期待できるカテゴリです。
RT2(Miller Class III相当)
歯間部の組織が一部失われている状態。完全被覆は難しいですが、部分的な被覆と歯間乳頭の改善が可能。湯口らが2026年に発表した「ボトムアップ縫合法」は、RT2症例に対する新しいアプローチです。
RT3(Miller Class IV相当)
歯間部の組織が大きく失われている状態。被覆率は限定的で、現実的には複合的治療(矯正・補綴・歯肉移植の組み合わせ)が必要です。
根面被覆術 — 下がった歯ぐきを戻す
根面被覆術(Root Coverage)は、患者さんご自身の上顎口蓋から結合組織を採取し、退縮部位に移植して歯ぐきの位置を本来の高さに戻す手術です。
世界的に確立された術式で、適応症例では長期的に安定した被覆が期待できることが多くの論文で報告されています。当院では症例に応じて以下の術式を使い分けます。
- Coronally Advanced Flap (CAF) — 古典的かつ確立された術式
- Tunnel Technique(トンネル法) — 乳頭切開を行わず、軟組織への侵襲を最小化
- Modified Tunnel Technique — Otto Zuhrが提唱した発展型
- ボトムアップ縫合法 — 当院論文(Yuguchi et al., 2026)で報告した新しいアプローチ
Otto Zuhr Modified Tunnel Technique
歯周外科のマイクロサージェリーで世界的に標準採用されている術式が、ドイツ・ミュンヘンの Otto Zuhr が提唱した Modified Microsurgical Tunnel Technique です。
この術式の最大の特徴は、歯間乳頭の切開を行わないこと。アンダーマイニング・スプリットフラップという特殊な剥離操作で、移植片への血流確保を最大化しつつ、術後の歯間乳頭を完全に温存します。
結果として、被覆率の向上と、術後の自然な歯ぐきの形態回復の両方を実現できます。湯口は Otto Zuhr と国際共著論文を執筆しており、この術式を札幌で実践しています。
ボトムアップ縫合法 — 当院論文の手技
2026年5月、湯口は筆頭著者として、米国歯周病学会公式誌『Clinical Advances in Periodontics』に 「Bottom-up suturing approach with biologic and grafting support for RT2 gingival recessions with papilla deficiency」 を発表しました。
この論文は、歯間乳頭が欠損したRT2症例──従来は被覆率の限界があるとされていた症例──に対する新しいアプローチを提示しています。
手技の3要素
- 結合組織移植(CTG) — 患者さん自身の口蓋から採取した結合組織
- 骨補填材 — 歯間部の容積を回復させる
- エナメルマトリックスデリバティブ(Emdogain) — 組織再生の生物学的促進
これらを組み合わせ、「ボトムアップ」(下から積み上げる)方向で縫合することで、12ヶ月後に根面被覆94.4〜100%、歯間乳頭の再構築を達成しました。
治療の流れ・通院回数の目安
初診から経過観察まで、おおよそ以下の流れになります。
STEP 1:初診カウンセリング・精密検査
お悩みの聞き取り、口腔内検査、CT・写真撮影。歯肉退縮の分類(RT1〜RT3)と原因を診断します。
STEP 2:治療計画のご提案
診断結果に基づき、適応となる術式と予後の見通しを、リスクと費用も含めてご説明します。不要な治療をご提案することはありません。
STEP 3:手術(1〜2時間)
局所麻酔下で根面被覆術を行います。マイクロサージェリーにより、軟組織への侵襲を最小化します。
STEP 4:経過観察
術後1週・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月で経過を確認。長期的な歯ぐきの安定を確認するため、術後3年までの経過観察を推奨しています。
合計の通院回数の目安:5〜8回/治療期間:約3〜6ヶ月/費用:症例により165,000円〜(税込・自由診療)。正確な費用は診断後にお見積りします。
歯ぐきの後退を防ぐには(予防)
治療で改善したあとも、同じ原因が続けば再発することがあります。次のポイントで、歯ぐきの後退を予防しましょう。
- 正しいブラッシング:やわらかめの歯ブラシで、力を入れずに小さく動かす。ゴシゴシ磨きをやめる。
- 歯周病のコントロール:定期的なメンテナンスで歯ぐきの炎症を抑える。
- 噛み合わせ・歯ぎしりのケア:過度な力がかかる場合はナイトガード等で歯を保護する。
- 矯正前の歯ぐき評価:矯正を予定している方は、事前に歯ぐきの厚みを診てもらう。
よくあるご質問
歯を残すために、
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札幌・大通駅直結のユアーズデンタルクリニックで、湯口院長によるご相談を承っています。現在のお口の状態、これまでの治療歴、これからの不安、何でもお聞かせください。


