8020運動の達成率は61.5%(2026年最新)。一方で歯周病は47.9%と改善せず

— この記事の監修者
湯口 晃弘(ゆぐち あきひろ)/ 医療法人令徳会 理事長・ユアーズデンタルクリニック院長
日本歯周病学会認定医、EAO(European Association for Osseointegration)認定医、5-D Japan ペリオインプラントコース インストラクター。2026年5月、米国歯周病学会の公式誌 Clinical Advances in Periodontics に筆頭著者として症例報告を発表(DOI: 10.1002/cap.70076)。
プロフィール詳細を読む →8020運動とは何か
「8020(はちまるにいまる)」は、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。1989年に厚生労働省と日本歯科医師会が提唱しました。歯が20本あれば、ほとんどの食べ物を噛めるとされています。
厚生労働省は「歯科疾患実態調査」で、この達成者の割合を継続して調べています。2025年6月26日に公表された令和6年調査では、8020達成者の割合は61.5%でした。前回の令和4年調査では51.6%でしたので、大きく改善しています。
達成率は上がったのに、歯周病は改善していない
同じ調査に、もうひとつの指標があります。歯周ポケットが4mm以上ある人の割合です。歯周ポケットとは、歯と歯ぐきのあいだの溝のことで、深いほど歯周病が進行していることを示します。
令和4年調査の時点で、この割合は47.9%。おおよそ2人に1人にあたります。厚生労働省の資料では、この割合について「改善していない」と記載されています。
歯の本数は増えている。検診を受ける人も増えている。しかし歯周病のある人の割合は変わっていない。この2つが同時に起きています。
なぜこの差が生まれるのか
歯周病は、歯を支える骨が失われていく病気です。ここに理由があります。
骨が減っても、歯そのものはしばらく残ります。抜けるのは、支えが限界を超えたときです。木が倒れるのは根元が完全に腐ってからであって、根が半分傷んだ段階ではまだ立っている、というのに近い状態です。
そのため、本数だけを数えると「歯が残っている」ことになりますが、その歯が今後も使えるかどうかは別の話になります。8020という指標は歯の本数を数えるものであり、その歯が健康かどうかまでは表しません。
歯周ポケットの深さは、何を意味するのか
歯周ポケットとは、歯と歯ぐきのあいだにある溝のことです。健康な状態では1〜2mm程度ですが、歯周病が進むと歯ぐきが炎症を起こし、この溝が深くなっていきます。
深さが問題になるのは、溝の底が、歯を支えている骨の位置とほぼ対応しているからです。ポケットが4mmあるということは、その分だけ支えが失われている可能性を示します。6mmを超えると、通常の歯みがきや歯科医院でのクリーニングでは器具が届かず、細菌が残り続けやすくなります。
そして、この段階では痛みがほとんど出ません。歯ぐきからの出血や口臭といったサインはあるものの、「グラグラする」と自覚できる頃には、骨の吸収がかなり進んでいることが少なくありません。47.9%という数字が示しているのは、自覚のないまま進行している人が2人に1人いるという状態です。
なぜ歯は増えたのに、歯ぐきは変わらないのか
考えられる理由は、対策の性質の違いです。
むし歯は、削って詰めれば「治療した」ことになります。抜かずに済んだ歯は、そのまま本数に反映されます。フッ素の普及や、削る量を最小限にする治療が広がったことも、本数の維持に効いています。
一方、歯周病は治療して終わりになる病気ではありません。細菌の量を減らして炎症を抑えても、日々のケアと定期的な管理を続けなければ、また進行します。検診を受ける人が63.8%に増えても、そこで見つかった歯周病がその後どう管理されているかまでは、この統計からは分かりません。
骨の減り方には2つの型がある
もうひとつ、知っておくと判断しやすくなることがあります。骨の減り方には型があり、型によって、回復を図れるかどうかが変わります。
垂直性骨欠損は、特定の歯の周りだけが縦に深く溶けている状態です。周囲に骨の壁が残っていれば、再生療法で回復を図れる場合があります。とくに壁が3面残っている「3壁性骨欠損」は、適応として良好とされています。
水平性骨吸収は、全体が平らに下がっている状態です。足場となる骨の壁が残っていないため、現在の技術では再生が難しいのが実情です。
つまり、同じ「骨が減っている」でも、次にできることが変わります。レントゲンで確認して初めて判断できる部分です。
では、何を確かめればよいのか
自分の歯が「本数として残っている」だけなのか、「支えも含めて健康な状態で残っている」のかは、見た目では分かりません。次の2つで確かめられます。
歯周組織検査では、歯周ポケットの深さを1本ずつ測ります。4mm以上が治療の対象となる目安です。レントゲンでは、歯を支えている骨がどの程度残っているかを確認します。骨がどの方向にどれだけ失われているかによって、選べる治療法が変わります。
骨が十分に残っていれば、歯周組織再生療法などで保存できる場合があります。逆に、支えが失われた歯を無理に残すと、隣の歯にも影響が及ぶことがあります。
当院の見方
当院には、抜歯を提案されて相談に来られる方がいます。その多くは、歯周病で骨が減っているケースです。
支えている骨がどの程度残っているかは、精密検査をして初めて分かります。本数を保つことと、使える状態で保つこと。この2つを分けて考える必要があると考えています。
関連する解説
この記事の内容に関連する解説を、次のページで詳しく扱っています。
- 溶けた骨は、もう戻らないの? ── 骨が溶ける仕組みと、再生できる条件・できない条件
- 歯周病で歯が抜けそう。諦めずにできること。 ── 進行段階べつにできること
- 歯槽膿漏(重度の歯周病)は、治せるの? ── 重度まで進んだ場合の選択肢
- 歯周組織再生療法 ── 治療内容・期間・費用・主なリスク
出典
- 厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査の結果について」(令和7年6月26日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59190.html - 厚生労働省 医政局歯科保健課「歯科口腔保健の推進に向けた取組等について」(2025年3月10日)
※令和6年調査から全国補正値(各都道府県の人口規模が反映されるように調整された値)が導入されており、前回調査との単純比較には注意が必要です。歯周ポケットの数値は令和4年調査の値です。
※本ページの数値と図は、厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査」「令和4年歯科疾患実態調査」を医療法人令徳会 ユアーズデンタルクリニックが加工して作成したものです。
よくあるご質問
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ご自身の歯ぐきの状態を知りたい方へ。歯周組織検査とレントゲンで、支えがどれだけ残っているかを確認できます。札幌・大通駅直結のユアーズデンタルクリニックでご相談を承っています。
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